2002年12月8日日曜日

Le Monde : 年寄り達、働け!

2002.12.8 
ルモンド。今日の論説は「年寄り達、働け!」とする厳しいご指摘です。日本もフランスも同じような高齢者問題を抱えているので身につまされます。基本的にはその通りですが、日仏共に、労働生産性の上昇の余地は、まだまだ相当あると思う。米国では労働生産性が今でも上昇中なのに、日仏では労働生産性が停滞しているのです。生産量は、労働者数、労働時間に加えて「労働生産性」の関数ですから、生産性が1%でも上がれば大きく変わる。またルモンドも分かっているように週35時間労働制度なんかもまず撤廃するべきですね。
par Eric Le BoucherAu boulot, les vieux ! (2002.12.8)

年寄り達、働け!

総合計画局は今週ある報告書を発表した。この報告書は自分の子供達の将来に関心のある全ての親たちが急いで熟読すべきものである。市場経済が勝利したなぞ言って「計画」の有用性を疑問視する連中も(特にそういう連中は政府内に多く、この6ヶ月この総合計画局を尊大にも無視してきたのだが)、この報告書を読んで深く考えるべきである。ここに、非常に慎重に、しかし最大限の真剣さでもって調べられた我々の将来が、きわめて明確に示されているのだ。

戦後のベイビーブーマー世代がもうじき隠退生活に入ることは知られている。それぞれの職業の年齢ピラミッド構成から、総合計画局の専門家は、職業毎に予想される退職者数を計算した。それにこれまでの傾向を延長して創出されたり消滅したりする雇用者数を付け加えた。これで我々子供の世代の雇用状態を表す大きな数表が完成したのだ。

どこから説明しようか。一番いいのは詳しく全部読むことだ(参照文献、ルモンドの12月7日のレポートおよび発表報告書原文)。様々な発見がある。たとえば、今後の採用者数が一番多いのは政府セクターだ。2000年から2020年にかけて、公務員の必要補充員数は、まとめて50万人と推計されている。政府セクターは、70万人の雇用を必要とする家政補助セクター(乳母、家政婦、庭師などなど)に次ぐ大きな雇用吸収部門となっている。他に、産業自体が若く定年退職者数が少ないが、情報・通信・研究部門でも雇用増が見込まれる。これらの新しい部門では発展が見込まれ多くの雇用が創られるが、職は高技能資格者に限定される。

次に来るのが、よりみんなに開かれた職場だが、工業部門や健康福祉部門。又しても驚きだが、これらの産業部門は新卒者を雇用するのに苦労することになるとのことだ。労働市場の力関係は、従来は給与労働者にとって不利となっていたのであるが、力関係は逆転する。今後は会社側が労働者をどうしてつなぎ止めるか、その術を学ばねばならない。これは既にして今の新卒者に見られる。しかし、手工業者やレストラン経営者なども、いま既に若者を採用するのに苦労すると文句を言っているが、同じことを努力しなければならない。でも、それは自分たちの責任でもある。これらの職種は、若者を採用するには、職業のイメージや就業慣行や、もちろん報酬も、根本的に見直さないといけない。1968年に社会人になったベイビーブーマー達は、今度は自分が引退することで最後の革命を引き起こすことになるのだ。

でも68年世代はそんなに急に退職していくのだろうか。この報告書のもう一つの教訓は(今までの常識を)疑えということにある。もし退職者数と新規就業者数がこのまま推移して行けば、結果は国の経済にとって悲劇的なものとなるのだ。以前は、この人口構造からして、将来は退職者数が新規就業者数を上回ることで、失業者数は減ると単純に算術計算して、将来は失業問題は解決すると考えられてきた。しかし単純計算ではその通りだが、実態は全然ちがうことが分かったのだ。

専門家の計算では現在9%に達している失業率は、確かに下がることは下がるものの、2010年までの平均成長率を年率2.4%として、2010年時点で7.9%にまでしか下がらないと計算している。此処に悲劇がある。この数字でも楽観的すぎるのである。定年退職は、とりもなおさず、生産活動人口の減少である。2006年以降毎年少なくとも2万人ずつ就業希望者が減少する。それに例の不吉な週35時間労働制度を加えると、経済の潜在成長率は低下せざるを得ない。「生産労働人口のほんのちょっとした減少でも成長率を2%以下の押し下げることになる」と総合計画局の責任者は言う。

これは国家経済の一番深刻な問題である。社会負担が重いとか、税金がどうだとか、国家の制度が古くて疲弊しているとか、いろいろ言うことはいいが、そんな問題はこの厳しい現実の問題(労働人口問題)に較べれば、どうってことはないのだ。働く人の数がどんどん減る国ではより豊かになることなど期待できないのだ。

解決策を求めねばならない。どんな? 報告書は全ての可能性を吟味している。女性の就業率を高めること? 確かにその通りだが、もう既に女性の就業率は男性の就業率とほとんど同じにまで高まっている。これだけでは十分ではない。学校の卒業年齢を低くして、早期に職業に就かせるようにするか? でもこれは歴史の流れに逆らうものだし、就業者の能力形成を損なうものである。外人労働者を入れる? それは明らかに一番簡単な解決策ではあるが、もう充分知られているように融和問題があるし、高い能力を持つ労働者を必要とする経済のニーズに応えるものではない。

唯一、本当に工夫できる余地があることは、仕事をより長く続けさせることである。「年寄り達、働け!」である。これが全ての問題の解決の方向である。年金会計の赤字を解決するためには、年金掛け金を払う期間を、大ざっぱに言って5年間長くする必要がある。政府はこれを言い出すのにびくびくしているから、たぶん当初は2年6ヶ月の延長(残りは2008年の新たな年金見直しの時に延長)とするだあろう。しかしこれは数字が明らかに示していることなのだ。経済が十分な潜在成長率で成長するために、また経済が必要とする労働者を確保するために、今流行となっている早期退職制度という殺人行為はやめさせるべきである。

フランスは怠け者のチャンピオンである(グラフを参照)。60歳以上の人間で就業しているのは15%にしか過ぎない。1970年当時ではこれが70%だった。会社側と労働者側はこれまで手をつないで、人員合理化の手段として早期退職制度を推進してきた。痛みの少ない手段ではあるが、同時に全体経済にとっては非経済的な手段である。社会問題大臣は、フランス・テレコムの2万人削減計画発表の直前、この問題はフランスの勇気の欠如を示すものであるとして、早期退職制度は「国家的災難」であると指摘した。フランスは本当に高齢者の就業を全体的に見直さねばならない。ベイビーブーマー達、あなた方はピルを飲んで、フリーセックスをして、充分な子供を作ることをしなかった! 仕方がない。働いてください。

Eric Le Boucher

ARTICLE PARU DANS L'EDITON DU 08.12.02

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